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急性と慢性の暑気あたり

気温の高い夏は、室内の温度も上昇します。24時間空調していなければ、外に出ない犬は室内で慢性の暑気あたりになり、ひどいときには命を失います。症状は、ほとんどが心肺の血行障害で、腎不全、肝炎を併発することもあります。暑気あたりは、暑さ負けともいいます。急性の暑気あたりは、目で見えるくらい全身の血管が膨張し、脈や呼吸がとても速くなり、口を開いて舌をだらんと垂らし、呼吸がかなり荒くなることもあります。ほとんどの場合、気温の高すぎる場所、特に直射日光の当たる場所に閉じ込められた、または長く活動しすぎたのが原因です。しかし、獣医療の現場では、飼い主の不注意で急性暑気あたりにかかった例は多くありません。ほとんどが慢性の暑気あたりです。毎朝、家族みんなが外出した後、空調のない高温の環境下で1日を過ごし、夕方家族が帰宅してからエアコンのスイッチを入れるため、犬は心肺、血液循環を温度変化に適応させなければなりません。こういう日々が長く続くと、体への負担は大きくなっていきます。慢性の暑気あたりは、数日または1〜2週間続いてから症状が現れます。食が細くなり、食べ物の好き嫌いも激しくなります。活動量も減り、飼い主が帰宅したときの興奮度が下がります。慢性の暑気あたりになっても、犬は口を開けたりあえいだりせず、呼吸数もほぼ変わらず体温も39度を超えることがないので、飼い主にとって気付きにくい病気です。

 

冬は室温を20度以上に保つ

夏、気温が上がりすぎると、犬の心肺に負担がかかり、心血管疾患のおそれが高まります。また冬に温度が下がりすぎると、心血管の機能障害や血管に軽い硬化がある犬は、心肺への負担が増えます。冬に寒波が到来すると、病院に脳卒中や心筋梗塞の患者が増えるのと同じです。高齢になると血管が硬化するのは犬も同じ。冬には、家で寝起きする場所の温度が20度を下回らないようにするのが、老犬にとっての安全の条件です。

 

多湿とアトピー性皮膚

20数年間にわたって診療してきた皮膚病の症例を見ると、特定の微生物による感染はごく少数にすぎず、8-9割以上は体質の問題によるものです。さまざまな内的、外的要因の中で、皮膚の状態に最も影響するのが湿度の変化です。長い間、温度や湿度が安定していると、犬の皮膚も心配いらないのですが、天気が急にガラッと変わって多湿の日が続くと、皮膚に変化が現れます。軽い症状だと、かゆみ、赤い腫れですみますが、ひどくなると、シミ、丘疹、あざ、膿疱、脱毛、鱗屑、かさぶた、びらんなどの症状が繰り返し現れます。長期にわたってアトピー性皮膚炎に苦しめられると、引っかいて表皮が脱落し、回復しても跡が残ります。さらに傷跡に色素が沈着したり、時には苔癬のように硬化したりして回復不可能になります(以上はいずれも皮膚の異常を表す専門用語です)。明らかに体質に問題があり、薬を数力月使っても同じ症状が繰り返し出てくる場合は、犬の暮らす場所の湿度をコントロールする必要があります。相対湿度が60を超えてはなりません。55というのが望ましい数字です。それでもよくならないときは、伝統の漢方薬を試してみるといいでしょう。漢方薬は化学物質ではなく生薬であり、長期にわたって服用すると体質が改善されます。ここ数年、ペット専用のエキス粉末の漢方薬または保健食品が市販されており、実際に効果をあげています。
 

ぜんそくも多湿から

犬にはときどき、気道から突然「ヒューヒュー」という音、喘鳴が発せられることがあります。4〜5回で治まったり、1、2分続いたり、激しく動いた後はもちろん日常生活の中でも発生します。ぜんそくの症状が長年続くと、飼い主は心配になり対処に困ってしまいます。普段から薬を用意しておくだけでなく、過度の運動や興奮しすぎといった要因を探る必要があります。避けるべき要因をすべて排除したら、症状発生時の湿度について考えてみましょう。湿度が急上昇すると、ぜんそくを起こすおそれがあるからです。偶発的なぜんそくの病歴がある場合、居住環境の湿度に対し、常に注意を払ってください。

呼吸器疾患

幼犬は呼吸器系の病気にかかりやすいため、幼犬の段階で連続して3~4回予防接種をしておくと、呼吸器系の問題が起きにくくなります。8種、10種の混合ワクチンには、犬ジステンパー、犬アデノウイルス(2型)、犬パラインフルエンザといった呼吸器ウイルスの抗原が含まれており、こうした予防接種を済ませていれば、重大な呼吸器系の病気にかかることはほとんどありません。1歳になってからは、年1回の予防接種が必要ですが、大事をとる飼い主は早めに予防接種を行います。なぜなら、予防接種の成分は抗原であり、犬の体内で抗体に変わって初めて効果があります。体質によっては、血液中の「抗体価」が1年ともたずに早めになくなり、伝染病にかかることがあるからです。このような症例が、獣医療の現場で実際に起こっています。

恐いウイルス性胃腸炎

恐いウイルス性胃腸炎には、犬パルボウイルス感染症(腸炎型)、犬コロナウイルス感染症などがあります。犬パルボウイルス感染症は、ウイルスの感染力が強く、気温の低い秋冬によく発生し、屋外で伝染します。発病の初期には食欲不振に陥り、そのうち嘔吐、下痢、血便などの症状が現れ、特別な嫌な匂いを発します。感染後1週間程度で免疫ができるため、対症療法で回復する場合もありますが、下痢や嘔吐が継続する場合は死亡率の高い病気です。ただ予防接種をしていればこの病気にはかかりません。免疫機能に不全があれば別ですが、そのような状況はめったにありません。
 

犬伝染性肝炎

犬伝染性肝炎ウイルスは、犬の年齢や品種を問わず、1歳未満の幼犬も感染し肝細胞と内皮細胞の核内に侵入します。発熱、のどの渇き、食欲不振、嘔吐、下痢、扁桃炎などの症状が見られ、結膜炎、目の分泌物の増加が起きることもあります。角膜が白く濁る水腫、いわゆる"Blueeyes"と呼ばれる症状が特徴です。犬伝染性肝炎は恐ろしい病気ですが、犬伝染性肝炎の抗原を含む、8種、10種の混合ワクチンを打っておくと、血清抗体が形成されて「抗体価」が維持されます。獣医療の現場で見た症例のほとんどが、1年以上予防注射を打っていなかった犬です。

犬レプトスピラ症

レプトスピラ症は世界でよく見受けられる人獣共通感染症の一つであり、排泄物を経由して伝染します。レプトスピラ菌を含む糞尿に汚染された水や汚泥に触れると容易に感染するので、台風で水害が発生すると、ヒトの症例が数多く発生します。特に高温多湿の環境下で、全身のさまざまな器官に深刻な症状をもたらします。死亡率が極めて高いため、8種混合ワクチンに2種類、10種混合ワクチンには4種類の抗原が含まれています。予防接種をしていれば、この病気にかかることはほとんどありません。

ライム病

ライム病はマダニに噛まれて感染する人獣共通感染症。動物の中では犬が最もこの病気にかかりやすく、ライム病ワクチンを毎年接種しいれば、心配はありません。
 

ライム病の犬に見受けられる症状

  1. 急性感染:発熱、食欲不振、元気消失、リンパ節腫脹、突発的な硬直、歩行障害、疼痛
  2. 慢性感染:反復性間接性非びらん性関節炎、皮膚の紅斑、出血、全伝導ブロック、糸球体腎炎、腎小管損傷、心筋炎

 

フィラリア症

蚊に刺されることで感染します。犬と犬間における接触やじゃれ合いで感染することはありません。フィラリアの幼虫が犬の体内に侵入し長期にわたって寄生する慢性犬糸条虫症では、疲れやすい、動いたときに咳や呼吸困難などの症状が出やすく、だんだん食が細って元気がなくなりやせていきます。異常に気づいて診察に訪れたときは、貧血がひどく、肝臓、腎臓の機能が低下しています。ひどい場合は心肺機能が衰えており治療が困難で死亡するケースが多い病気です。